横領罪(業務上横領罪)

2026.01.25

  • #財産事件

横領罪(業務上横領罪)

横領罪に関する条文

(横領)
第252条
第1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の拘禁刑に処する。
第2項 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

(業務上横領)
第253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の拘禁刑に処する。

成立要件

横領罪は、「自己の占有する」「他人の物」を、「横領」した場合に成立します(第252条第1項)。
「自己の占有する」とは、物に対して現実に占有を有している場合や法律上支配している場合をいいます。例えば、不動産の登記名義人は、法律上支配しているとして、不動産の占有者となります。
「他人の物」とは、他人の所有する財物をいいます。他人とは、行為者以外の者をいい、法人も含みます。
「横領」とは、自己の占有する他人の物を不法に領得することをいいます。不法に領得するとは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をすることをいいます。委託の任務は、契約や法令の規定、慣習等により発生します。例えば、預かるように頼まれた他人の物を売却したり、贈与したりすることをいいます。
「他人の物」ではなく、公務所から保管を命ぜられた自己の物を横領した場合にも、同様に同罪が成立します(刑法第252条第2項)。例えば、税金を滞納していたために、税務署に差押えされた自己の物を横領した場合です。

業務上自己の占有する他人の物を横領した場合には、業務上横領罪が成立します(第253条)。
業務上占有するとは、業務者がその業務の遂行として他人の物を占有することをいいます。例えば、会社の経理担当者は、業務の遂行として会社の金銭を占有しているといえ、これを横領した場合には、同罪が成立します。
業務とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続する事務のことをいいますので、必ずしも給与が発生する業務に限りません。例えば、マンション組合や同窓会等の団体において、日頃から団体の財物を管理している立場であれば、業務に該当し得ます。

具体的事例

横領罪(業務上横領罪)には、様々な類型があります。
以下、横領罪(業務上横領罪)にあたる具体的な事例を見てみましょう。

横領罪にあたる事例

レンタカーを借り、返却期限が過ぎていることを認識しながら、利用し続けていた。

レンタカー業者から自動車を借りたものは、他人の物を占有しているといえます。返却期限は過ぎていますから、利用を続ける権限はなく、自動車を運転するという所有者でなければできない処分をしたと評価されるので、同罪にあたります。

友人から借りた漫画を、第三者へ売却した。

友人から漫画を借りた者は、他人の物を占有しているといえます。これを第三者へ売却することは、所有者でなければできない処分をしたものと評価されるので、同罪にあたります。

業務上横領罪にあたる事例

顧客から集金した代金を会社に入れずに、自分のものにした。

集金した者は、業務上会社の金銭を占有しているといえます。これを自分のものにしたことは、所有者でなければできない処分をしたものと評価されるので、同罪にあたります。

会社の名義でパソコンを購入し、管理している者が、これを第三者へ転売した。

会社の名義で購入したパソコンを管理する者は、業務上会社の物を占有しているといえます。これを第三者へ売却することは、所有者でなければできない処分をしたものと評価されるので、同罪にあたります。

会社の得意先に配布予定のギフトカードを、私的に使用した。

配布するためのギフトカードを所持していた者は、業務上会社の物を占有していたといえます。これを私的に使用することは、所有者でなければできない処分をしたものと評価されるので、同罪にあたります。

不起訴処分獲得に向けた弁護活動

2024年の検察統計調査によれば、横領罪(業務上横領罪を含む)の起訴率は22.2%であり、直近5年間でも概ね同水準となっています。つまり、横領罪では約5件に1件が不起訴となっており、適切な弁護活動によって不起訴となる可能性は十分にあります。

認め事件(被疑事実を認めている事件)の場合

不起訴処分の可能性を高めるうえで最も重要なのは、被害者との示談成立です。示談によって被害者の処罰感情が和らぎ、被害が回復されたと評価されれば、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。

弁護士は、まず事実関係を整理したうえで被害者と連絡を取り、示談交渉を行います。示談の内容には、本人が真摯に反省し謝罪していること、被害金額の弁済、慰謝料等の支払い、被害者が本人を許し、処罰を求めていないこと等を盛り込みます。

また、勤務実績や社会的立場、家庭事情に関する証拠、反省の程度や再犯可能性が低いことなどを示す客観的証拠を収集します。これらの資料をもとに検察官と協議し、必要に応じて意見書を提出します。検察官に「社会内で更生が可能である」という印象を与え、処罰の必要がないと判断されれば、不起訴処分の可能性が高まります。

否認事件(被疑事実を認めていない事件)の場合

本人からの聞き取りを十分に行ったうえで、被害者等の事件関係者からの聴取、被害者とのメールやSNS等でのやりとりなどを通じて、本人にとって有利な証拠を集めることが不起訴処分獲得のために重要です。

こうした活動により、処分行為や不法に領得する意思がなかった等を主張していきます。

捜査の初期段階で、本人が横領行為を行ったことを窺わせるような内容の供述調書を取られてしまうと、その後にその内容を否定するのが難しくなります。そのため、初期捜査の段階で本人にとって不利な証拠を作られないよう、取調べ対応について打ち合わせを重ねたり、取調べに弁護士が同席したり、場合によっては取調べを拒否する等の対応をします。

いずれの場合でも、早期に弁護士が関与し、証拠保全や交渉を開始することが不起訴処分獲得の鍵となります。