詐欺罪

2025.12.11

  • #財産事件

詐欺罪

詐欺罪に関する条文

(詐欺)
第246条
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

成立要件

詐欺罪は、「人を欺いて」、「財物」を「交付させた」場合に成立します(第246条第1項)。

「人を欺いて」とは、人を錯誤に陥らせる行為をすることをいいます。例えば、他人になりすますことです。
機械を相手にする詐欺的行為は、「人を欺く」行為ではありません。例えば、他人のキャッシュカードで銀行のATMで現金を引き出す行為は、「人を欺いて」にはあたりません(窃盗罪には該当し得ることになります)。
欺く手段は、言語によるものや動作によるもの、作為によるもの、不作為によるものでも該当します。例えば、保険契約にあたって被保険者の疾病を告知しないことは欺く行為となり得ます。

「財物」とは、動産や不動産のことです。他人の占有する財物が対象になります。自己の財物であっても他人が占有しているものは、他人の財物として対象となります(刑法第251条、第242条参照)。

「交付させた」とは、相手方の錯誤に基づいた財産を処分する行為によって、財物の占有を自己又は第三者が取得することをいいます。

また、人を欺く同様の方法により、財産上の利益を得たり、他人に得させた場合にも、同罪が成立します(第246条第2項)。財産上の利益とは、財物以外の財産的利益のことをいいます。例えば、債権を取得したり、債務を免れたりすることです。

具体的事例

詐欺罪には、様々な類型があります。
以下、詐欺罪にあたる具体的な事例を見てみましょう。

詐欺罪にあたる事例

所持金がなく、料金を支払うつもりはなかったが、タクシーに乗車し、目的地まで送迎させて料金を支払わなかった。

料金を支払う資力も意思もないにもかかわらず、それを隠してタクシーに乗車するという運転手を欺く行為があります。料金が支払われるものと誤信させ、目的地に向かうタクシーに乗車した(労務の提供)という財産上の利益を得たものと評価されるので、同罪にあたります。

ネットオークションで、初めから商品を送るつもりがないのに、商品を出品し、落札者に現金を自身の銀行口座に送金させた。

商品を送付するつもりがないにもかかわらず、それを隠して商品を出品するという落札者を欺く行為があります。商品が送られてくるものと誤信させ、現金を振り込ませており、財物を交付させたものと評価されるので、同罪にあたります。

市役所の職員になりすまし、還付金があると説明し、虚偽の受取方法を伝え、自身の銀行口座に送金させた。

市役所の職員になりすまし、還付金があると説明し、虚偽の受取方法を伝えるという相手を欺く行為があります。還付金が振り込まれると誤信させ、手続きをさせたことで、預金債権という財産上の利益を得たものと評価されるので、同罪にあたります。

拾った他人のクレジットカードを使用して、お店で商品を購入した。

他人のクレジットカードを本人になりすまして使用するという店員を欺く行為があります。本人がクレジットカードを使用していると誤信させ、商品を受け取り、財物を交付させたものと評価されるので、同罪にあたります。

実際には投資事業をしていないのに、SNSで「必ず儲かる」と勧誘し、投資資金として現金を自身の銀行口座に送金させた。

投資事業をしていないにもかかわらず、「必ず儲かる」と勧誘する相手を欺く行為があります。投資によって儲かるものと誤信させ、現金を振り込ませており、財物を交付させたものと評価されるので、同罪にあたります。

不起訴処分獲得に向けた弁護活動

2024年の検察統計調査によれば、詐欺罪の起訴率は51.4%であり、直近5年間でも概ね同水準となっています。つまり、詐欺罪では約2件に1件が不起訴となっており、適切な弁護活動によって不起訴となる可能性はあります。

認め事件(被疑事実を認めている事件)の場合

不起訴処分の可能性を高めるうえで最も重要なのは、被害者との示談成立です。示談によって被害者の処罰感情が和らぎ、被害が回復されたと評価されれば、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。

弁護士は、まず事実関係を整理したうえで被害者と連絡を取り、示談交渉を行います。示談の内容には、本人が真摯に反省し謝罪していること、慰謝料等の支払い、被害者が本人を許し、処罰を求めていないこと等を盛り込みます。

また、勤務実績や社会的立場、家庭事情に関する証拠、反省の程度や再犯可能性が低いことなどを示す客観的証拠を収集します。これらの資料をもとに検察官と協議し、必要に応じて意見書を提出します。検察官に「社会内で更生が可能である」という印象を与え、処罰の必要がないと判断されれば、不起訴処分の可能性が高まります。

否認事件(被疑事実を認めていない事件)の場合

本人からの聞き取りを十分に行ったうえで、現場の確認や被害者等の事件関係者からの聴取、被害者とのメールやSNS等でのやりとり、防犯カメラ映像の保全などを通じて、本人にとって有利な証拠を集めることが不起訴処分獲得のために重要です。

こうした活動により、相手を欺く行為がなかったこと、相手を欺くつもりはなく、詐欺罪の故意がなかったこと等を主張していきます。

捜査の初期段階で、本人が欺く行為を行ったことや欺くつもりであったことを窺わせるような内容の供述調書を取られてしまうと、その後にその内容を否定するのが難しくなります。そのため、初期捜査の段階で本人にとって不利な証拠を作られないよう、取調べ対応について打ち合わせを重ねたり、取調べに弁護士が同席したり、場合によっては取調べを拒否する等をします。

いずれの場合でも、早期に弁護士が関与し、証拠保全や交渉を開始することが不起訴処分獲得の鍵となります。