脅迫罪
2025.11.21
- #暴力事件
脅迫罪
脅迫罪に関する条文
(脅迫)
第222条
第1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
第2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
成立要件
脅迫罪は、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える」ことを「告知」して、「脅迫」した場合に成立します。
「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える」とは、命の危険にさらすことやケガを負わせること、個人の自由を制限すること(例えば、監禁をして身体の自由を制限すること)、社会的評価を低下させること(例えば、不倫をしていることを公表すること)、経済的価値を侵害すること(例えば、現金を奪うこと)をいいます。
「告知」とは、直接口頭で告げたり、書面やメールを送付することのみでなく、黙示の方法や挙動によって暗示することも含みます。
例えば、現実に出火もないのに、「出火見舞い申し上げます、火の元にご用心ください」と書いた手紙を送付することは、放火することの黙示の告知といえます。
また、相手の自宅付近にある物に火をつけて燃やす行為は、相手がその意図を察知できる状況があれば、相手の住宅を放火することの挙動による告知といえます。
「脅迫」とは、他人を畏怖させるような害悪を加える旨を告知することをいいます。告知された害悪は一般人を基準として恐怖を感じる程度である必要があります。実際に相手が恐怖を感じたかどうかではなく、客観的に恐怖を感じる内容であったかが、判断基準となります。
危害を加える対象が、相手方本人以外にその親族である場合も、同罪が成立します(刑法第222条第2項)。
「親族」とは、配偶者、6親等までの血族(はとこ等)、3親等までの姻族(配偶者のおじ、おば等)をいいます(民法725条参照)。
恋人や友人、職場の同僚は危害の対象にはなりません。例えば、「お前の恋人を痛い目にあわせるぞ」と脅かしても、原則として脅迫罪は成立しません。
具体的事例
脅迫罪は、本人の意図に反して同罪にあたることがあり、成立の判断が難しい場合があります。
以下、脅迫罪にあたる具体的な事例を見てみましょう。
脅迫罪に当たる事例
相手に「殺してしまうぞ!」と言って、脅かした。
生命に対して危害を加える旨を告知していると評価されるため、脅迫罪にあたります。
相手に「夜道に気をつけろ!」とメールを送信した。
相手に生命または身体に危害を加える旨を黙示的に告知していると評価されるので、脅迫罪にあたります。
相手に「お前の息子をさらって、監禁してやる」とSNSに投稿した。
本人の親族の身体的活動の自由に対して、危害を加える告知であると評価されるため、脅迫罪にあたります。SNSやインターネットへの投稿も特定の個人に対して危害を加える告知であれば、該当します。
飲食店で、店主と口論となり、「お前の店の悪い評判をネットに書き込むぞ」と言った。
名誉に対して危害を加える告知をしていると評価されるため、脅迫罪にあたります。
「家を燃やしてやる」と書いた手紙を相手の家に投函した。
財産に対して危害を加える告知をしていると評価されるので、脅迫罪にあたります。
なお、相手が手紙の内容を認識する前に、手紙を破棄した場合には脅迫罪は成立しません。相手に内容が伝わっていない場合は、「脅迫」があったとはいえないからです。
不起訴処分獲得に向けた弁護活動
2024年の検察統計調査によれば、脅迫罪の起訴率は35.3%であり、直近5年間でも概ね同水準となっています。つまり、脅迫罪では約3件に1件が不起訴となっており、適切な弁護活動によって不起訴となる可能性は十分にあります。
認め事件(被疑事実を認めている事件)の場合
不起訴処分の可能性を高めるうえで最も重要なのは、被害者との示談成立です。示談によって被害者の処罰感情が和らぎ、被害が回復されたと評価されれば、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。
弁護士は、まず事実関係を整理したうえで被害者と連絡を取り、示談交渉を行います。示談の内容には、本人が真摯に反省し謝罪していること、慰謝料等の支払い、被害者が本人を許し、処罰を求めていないこと等を盛り込みます。
また、勤務実績や社会的立場、家庭事情に関する証拠、反省の程度や再犯可能性が低いことなどを示す客観的証拠を収集します。これらの資料をもとに検察官と協議し、必要に応じて意見書を提出します。検察官に「社会内で更生が可能である」という印象を与え、処罰の必要がないと判断されれば、不起訴処分の可能性が高まります。
否認事件(被疑事実を認めていない事件)の場合
本人からの聞き取りを十分に行ったうえで、現場の確認や被害者等の事件関係者からの聴取、被害者とのメールやSNS等でのやりとり、防犯カメラ映像の保全などを通じて、本人にとって有利な証拠を集めることが不起訴処分獲得のために重要です。
こうした活動により、脅迫の事実が存在しないこと、言動が脅迫行為に該当しないこと等の主張をしていきます。
捜査の初期段階で、本人が脅迫行為を行ったことを窺わせるような内容の供述調書を取られてしまうと、その後にその内容を否定するのが難しくなります。そのため、初期捜査の段階で本人にとって不利な証拠を作られないよう、取調べ対応について打ち合わせを重ねたり、取調べに弁護士が同席したり、場合によっては取調べを拒否する等します。
いずれの場合でも、早期に弁護士が関与し、証拠保全や交渉を開始することが不起訴処分獲得の鍵となります。