不同意性交等罪

2025.11.05

  • #性犯罪事件

不同意性交等罪

不同意性交等罪に関連する条文

(不同意性交等)
第177条
第1項 前条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第179条第2項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する。
第2項 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
第3項 16歳未満の者に対し、性交等をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。

(未遂罪)
第180条 第176条、第177条及び前条の罪の未遂は、罰する。

成立要件

不同意性交等罪は、「前条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由」により、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」、「性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」をした場合に成立します(刑法第177条第1項)。

「前条第1項各号に掲げる行為又は事由」とは、刑法第176条第1項で規定されている以下の行為又は事由です。

  • 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと
  • 心身の障害を生じさせること又はそれがあること
  • アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること
  • 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること
  • 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと(例えば、不意打ち的行為のこと)
  • 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること
  • 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること
  • 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること(例えば、上司と部下の関係や教師と生徒の関係のこと)

本条では、上記行為又は事由その他これらに類する行為又は事由があることが必要です。
「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」とは、相手が拒否できない状態を利用してということです。

「性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」とは、性交、肛門性交、口腔性交や身体の一部または物を膣や肛門に挿入する行為です。上記の列挙された行為又は事由により、相手が拒否できない状態を利用して、性交等を行った場合に成立します。
列挙された行為は行ったが、性交等の行為に至らなかった場合には、未遂罪(刑法第180条)になります。

また、「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて」、性交等を行った場合(刑法第177条第2項)や「16歳未満の者に対し、性交等をした者」(刑法第177条第3項)も、同様に同罪が成立します。

「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて」とは、行為がわいせつなものではないと相手に認識させることや行為をする相手を人違いさせたり、またはそれらの状況を利用してということです。

「16歳未満の者に対し、性交等をした者」とは、16歳未満の者に対しては同意があっても同罪が成立するということです。また、相手が13歳~15歳の場合には、5歳以上年上の者が性交等をすると、相手の同意があっても同罪が成立します(年齢差が5歳未満であれば、同意がある限り同罪は成立しません。)。

具体的事例

不同意性交等罪は様々な類型があり、成立の判断が難しい場合があります。

以下、不同意性交等罪の具体的な事例を見てみましょう。

不同意性交等罪の具体的な事例

相手を殴打し、怖がらせて、性交をした。

暴行、脅迫を用いて性交を行っていますので、不同意性交等罪が成立します。

お酒を飲み泥酔し、意識がはっきりしていない者と性交した。

アルコールの影響がある状態を利用して同意なく性交をしていますので、不同意性交等罪が成立します。

電車内で面識のない女性に対し、突然下着の中に手を入れ、指を膣内に挿入した。

面識のない女性に対して突然行為に及んでいますから、同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがない場合にあたります。
また、膣内に指を挿入する行為も「性交等」に含まれますので、不同意性交等罪が成立します。

会社の上司が部下に対し、「言うとおりにしないと、あなたにとって業務上の支障が生じる」と言って性交した。

社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させて、性交をしていますので、不同意性交等罪が成立します。

相手が13歳未満と知った上で、同意を得た上で性交をした。

相手が13歳未満である場合は、同意の有無に関わらず、不同意性交等罪が成立します。

不起訴処分獲得に向けた弁護活動

2024年の検察統計調査によれば、不同意性交等罪の起訴率は72.4%であり、直近5年間では、34.8%~72.4%と年によりばらつきがあります(2023年以前は、強制性交等罪の統計値を参照しています。)。起訴率が高い犯罪類型ではありますが、適切な弁護活動によって不起訴となる可能性は十分にあります。

認め事件(被疑事実を認めている事件)の場合

不起訴処分の可能性を高めるうえで最も重要なのは、被害者との示談成立です。示談によって被害者の処罰感情が和らぎ、被害が回復されたと評価されれば、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。

弁護士は、まず事実関係を整理したうえで被害者と連絡を取り、示談交渉を行います。示談の内容には、本人が真摯に反省して謝罪していること、慰謝料等の支払い、被害者が本人を許し、処罰を求めていないこと等を盛り込みます。

また、勤務実績や社会的立場、家庭事情に関する証拠、反省していることや再犯可能性が低いことなどを示す客観的証拠を収集します。これらの資料をもとに検察官と協議し、必要に応じて意見書を提出します。検察官に「社会内で更生が可能である」という印象を与え、処罰の必要がないと判断されれば、不起訴処分の可能性が高まります。

否認事件(被疑事実を認めていない事件)の場合

本人からの聞き取りを十分に行ったうえで、現場の確認や被害者等の事件関係者からの聴取、被害者とのメールやSNS等でのやりとりなどを通じて、本人にとって有利な証拠を集めることが不起訴処分獲得のために重要です。

こうした活動により、相手と同意の上で行為を行っていたことや不同意性交等罪の構成要件に該当する事実が存在しないことなどを主張していきます。

また、捜査の初期段階で、本人が不同意性交等罪にあたる事実があったことを窺わせるような内容の供述調書を取られてしまうと、その後にその内容を否定するのが難しくなります。そのため、初期捜査の段階で本人にとって不利な証拠を作られないようにアドバイスをします。

さらに、捜査機関の手続きに違法や不備がないかを検討し、違法収集証拠の排除(証拠物の収集過程に違法がある場合は、証拠として認められない)やその他の手続違反の指摘を行うこともあります。

いずれの場合でも、早期に弁護士が関与し、証拠保全や交渉を開始することが不起訴処分獲得の鍵となります。