器物損壊罪

2025.09.05

  • #財産事件

器物損壊罪

器物損壊罪に関する条文

(器物損壊等)
刑法第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

(自己の物の損壊等)
刑法第262条 自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は配偶者居住権が設定されたものを損壊し、又は傷害したときは、前3条の例による。

成立要件

器物損壊罪は、「他人の物」を「損壊」し、又は「傷害」した場合に成立します。

「他人の物」とは、公務所の用に供する文書(刑法第258条)、権利又は義務に関する文書(刑法第259条)、建造物又は艦船(刑法第260条)以外の他人の物を指します。これには動産、(建造物以外の)不動産を問わず、動産には動物も含まれます。例えば、食器類、自動車、ペットなどがこれにあたります。

ただし、自己の所有物であっても、その所有物が差押えを受けていたり、担保に入れていたり、賃貸していたり、配偶者居住権が設定されていたりすれば、「他人の物」として扱われます。(刑法第262条)。

「損壊」とは、動物以外の物の毀棄であり、物の効用を害する一切の行為をいいます。物を物理的に破壊することのほか、汚損することもこれにあたる場合があります。例えば、食器を割って物理的に破壊することや、食器を汚物で汚すことなどがこれにあたります。

「傷害」とは、動物を対象とする場合であり、「損壊」と同じ意味です。例えば、動物の健康を害したり、死亡させることです。また、飼育されている動物を逃がす行為もこれにあたります。

不起訴処分獲得に向けた弁護活動

不起訴処分の可能性を高めるうえで最も重要なのは、被害者との示談告訴の取下げを得ることです。

器物損壊罪は、親告罪(刑法第264条)であり、被害者の告訴が必要となる罪であるため、告訴されなければ起訴されることはありません。

告訴されることを防ぐ(あるいは既にされた告訴を取り下げてもらう)ためには、被害者との示談交渉が極めて重要です。示談交渉においては、事件の動機、経緯などを説明して被害者に対して謝罪し、謝罪文の提出等を行います。そして、被害者の意向を聴き取り、話し合いがまとまれば示談金を支払って示談書を取り交わしたり、告訴取下書を取得するなどの弁護活動を行います。

また、勤務実績や社会的立場、家庭事情に関する証拠、反省の程度や再犯可能性が低いことなどを示す客観的証拠を収集します。

これらの資料をもとに検察官と協議し、状況によっては意見書を提出するなどして、不起訴処分の可能性を高めます。

いずれの場合でも、早期に弁護士が関与し、証拠保全や交渉を開始することが、不起訴処分獲得の鍵となります。