名誉毀損罪

2025.08.28

  • #その他の事件

名誉毀損罪

条文

(名誉毀損)
刑法第230条
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

(公共の利害に関する場合の特例)
刑法第230条の2
1 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

成立要件

名誉毀損罪は、「公然と」「事実を摘示」し、人の名誉を毀損した場合に成立します。

「公然と」とは、不特定又は多数の人が認識し得る状況であることをいいます。例えば、SNSの投稿は、不特定又は多数人が認識し得るので公然性があるといえます。

「事実を摘示」は、人の社会的評価を低下させるに足る具体的事実を示すことをいいます。例えば、SNSで「AはBと不倫関係にある」と書き込むこと等がこれにあたります。
なお、具体的事実ではなく、単なる侮辱(「ばか」「無能」などの抽象的評価)の場合は、「侮辱罪」(刑法231条)に当たり、名誉毀損罪には該当しません。

また、摘示された事実は、一般人の社会的評価を低下させるものであることが必要です。これは真実であったとしても社会的評価を低下させるものであればよく、例えば不倫関係にあることが事実であったとしても原則として名誉毀損罪が成立します。

ただし、刑法第230条の2の違法性阻却事由が認められる場合には、違法性が否定され、名誉毀損罪は成立しません

不起訴処分獲得に向けた弁護活動

不起訴処分の可能性を高めるうえで最も重要なのは被害者との示談告訴の取下げを得ることです。

名誉毀損罪は、親告罪(刑法第232条)であり、被害者の告訴が必要となる罪です。そのため、告訴されなければ起訴されることはありません。

告訴されることを防ぐ(あるいは既にされた告訴を取り下げてもらう)ためには、被害者との示談交渉が極めて重要です。示談交渉においては、事件の動機、経緯などを説明して被害者に対して謝罪し、謝罪文の提出等を行います。そして、被害者の意向を聴き取り、話し合いがまとまれば示談金を支払って示談書を取り交わしたり、告訴取下書を取得するなどの弁護活動を行います。

また、勤務実績や社会的立場、家庭事情に関する証拠や、反省の程度や再犯可能性が低いことなどを示す客観的証拠を収集します。
これらの資料を元に検察官と協議し、状況によっては意見書を提出する等して不起訴処分の可能性を高めます。

名誉毀損罪に該当する行為が、公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合には、摘示した事実の真実性を裏付ける証拠を収集することで、違法性阻却事由がある可能性を示していくこともあります。

いずれの場合でも、早期に弁護士が関与し、証拠保全や交渉を開始することが、不起訴処分獲得の鍵となります。